2017年12月23日土曜日

レビュー企画 第4回 幻灯劇場

「君は、幻灯劇場にどんな劇団になっていてほしい?」
「それって確定拠出年金ちゃう?」

 こんな会話が飛び交う。劇団総会では、劇団員たちが今後の「自分の」ビジョンについて話し合っていた。その先に、幻灯劇場はある、ということなのだろうか。

 幻灯劇場のMTGに、取材ということで伺った。ここまでレビュー企画では、個人へのインタビューをもとに記事を掲載してきた。今回も、藤井颯太郎をはじめとしたこの劇団の個人にインタビューする向きももちろん考えられた。しかしながら今回、「幻灯劇場」というまとまった形で取材をお願いしたのは、集団であることによってこそ、もたらされている彼らの魅力を、小生自身が強く感じ取ってきたからである。小生は、この集団と、京都学生演劇祭2016をきっかけに知り合った。それから、第二回全国学生演劇祭、そして第二回第大韓民国演劇祭in大邱への招聘公演にいたって、大変親しい関係となった(少なくとも小生はそう思っている)。さらに、演劇雑誌でな「劇団不要論」という言葉を目にしたことも、このことにつながる。


 藤井は、公演の度に新しい人材を引き連れてくる。彼の人を引きつける力は、強い。演劇も、工業製品と同じくモジュール化され、商品として洗練されていく。作品は作品単体として観られ、誰が創ったのか、文脈を知らなくても楽しめるものが重視されていくかもしれない。しかし、強情な小生は文脈まで楽しみたい。さらに空間は集団にしか創ることができない。集団の力は、継続的な交わりによって高められていく。
 MTGの内容については、もちろん詳らかにはしないが、前のめりになって、「次の、次の」という積極的な姿勢が会議からは見て取れる。特定の個人だけが話す、意見を求められても何も出てこない、そんなことはここでは起こらない。

 兵庫県立宝塚北高等学校演劇科在学中、藤井颯太郎を中心に旗揚げされた幻灯劇場は「やりたいと思ったことを、そう簡単にやらせてはもらえなかった」ことがそのきっかけであったという。この類いのこと、つまり圧力に対する抵抗は、結果的に創作の契機となる。「大人のお膳立て」を土台に進めていては、その土台からはみ出て新しいものを産み出すことにはなかなかつながらないということなのだろうか。その次にやってくる課題は、何もかも自分たちで拵えなければならないという現実である。そのためには、より集団の結束力が必要となる。しかも、劇団のように「継続的に」となると、それはより一層重要となる。個人の力だけではどうにもならないが、集団でかかればどうにでもなる、ということはいくらでもある。「思考」の拡張である。もちろん、彼らは人間だから摩擦も起こることだろう。しかし、それさえも熱に代えて創作に巻き込んでしまう。そんな強かさを肌身でずっと感じてきた。これからも、そうであってほしいと願う。
神田真直(京都学生演劇祭2017 企画スタッフ)


幻灯劇場(げんとうげきじょう)
2013年、藤井颯太郎を中心に旗揚げ。
映像作家や俳優、ダンサー、写真家等、ジャンルを超えた作家が集まり、
「祈り」と「遊び」をテーマに創作をする演劇集団。2017年文化庁文化交流事業として大韓民国演劇祭へ招致され『56db』を上演。
韓国紙にて「息が止まる、沈黙のサーカス」と評され、高い評価を得る。
その後、京都市中央卸売市場の旧氷商工場跡を劇空間「Asobient〔アソビエント〕」に改造し、杮落とし公演として二作品同時上演を行う等、国内外・劇場内外で挑戦的な作品を発表し続けている。

【次回公演】
『DADA』
作/演出 藤井颯太郎

2018年
3月17日(土) 15時 19時
3月18日(日) 13時 17時

大阪市立芸術創造館

京都駅地下鉄清水線十二番出口のFロッカーに捨てられた兄弟達を軸に、成仏することの出来ない幽霊達が織り成す群像劇。

2017年、ロームシアター京都で初演。幻灯劇場史上最大動員数を記録したオリジナルロックミュージカル。2018年3月、再演決定!

【劇団HP URL】
http://gentou-gekijou.com/


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